スピード違反で減点になったみーちゃんのお父さん
2018年 10月 09日
今日のみーちゃんはおとうさんとドライブです。
みーちゃんのおとうさんは、裏道や抜け道を自動車で走るのが大好きです。おかあさんが一緒に乗っていないと、みんながあまり通らない道を見つけて、もうビュンビュン行っちゃいます。
この前、八幡平に行ったときだって、家に着くなり、「ほら、高速道路を使わなくても、こんなに早かった」とみーちゃんにうれしそうに自慢しています。
みーちゃんとおとうさんは、花巻の宮沢賢治記念館の帰りに、ちょっとドライブをすることにします。いつものように、おとうさんは裏道をバンバン飛ばしています。
後部座席に座っていたみーちゃんの耳に、突然、サイレンの音が聞こえます。急いで、後を振り向きます。
「あれ?パトカーが近づいてくるよ」。
おとうさんは、ルーム・ミラーをちらっと見て、チッと舌打ちをします。
──パトカー、何か用があるのかな?
おとうさんは路肩に自動車を静かにとめ、大きくため息をつきます。「ちょっと話をしてくるから。すぐ戻ってくるから」と威勢よくドアを開けて出て行きます。
みーちゃんは退屈をまぎらわすために、窓から外の風景をながめることにします。あたりは田んぼだらけです。お辞儀をしているように垂れ下がった黄金色の稲穂が、風で、ときどき、ゆれています。車の中にまで、サワサワとその音がします。もうすぐ稲刈りです。
──遅いなあ。どうしたのかな?
5分以上たったのに、おとうさんは戻ってきません。みーちゃんはシートにひざをついて、リアウィンドウから後を見ます。
おとうさんは、ヘルメットを被ったおまわりさんに、何度も頭を小さく下げています。
──あれ、なんで謝ってるんだろ?
そのうちに、おとうさんが神妙な表情で戻ってきます。
「遅かったね。どうしたの?」
重そうにシートに腰かけて、また大きくため息をついたおとうさんにみーちゃんがそうたずねます。おとうさんは、とぎれとぎれに、こう言います。
「うん……ちょっと話しこんじゃってねえ……。おまわりさんがね……、『そんなに急いでどこ行くの?』って言うから……、おとうさん、『おうちです』って答えたんだな……。そしたら……、『でも、おうちは逃げないでしょ?』って言うから……、『でも、走ら(柱)ない家はありません』って答えたらさ…、『ここは「笑点」じゃないからね。はい、「減点」』だってさ……」。
──なあんだ、おとうさん、スピード違反しちゃったのか。
帰ったら、「いつかこうなると思ってたわ」とおかあさんにそれ見たことかと怒られるんだろうなと同情するみーちゃんなのです。