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教室に一人残るみーちゃん

今日のみーちゃんは教室に一人残っています。


5時間目の授業の終わりに、岡先生が教室に入ってきます。


──あれ、どうしたんだろう?今日は岩田先生がいるのに。


岡先生は岩田先生がいない時とかに代わりに授業をする女の先生です。メガネをかけて地味な感じですが、やさしいので、クラスのみんなから慕われています。


「みんな聞いてくれ。実は、岡先生からみんなに話したいことがあるそうだ」。


そうみんなに呼びかけて、岩田先生は岡先生に「どうぞ」と言って場所を交代します。


黒板の前にやって来た岡先生はいつもと様子が違います。暗い感じがします。


「みなさん、先生は今日で学校をやめることになりました。残念ですが、みなさんともお別れです」。


「えー!」


クラスのみんなが一斉にそう叫びます。


──っどうして?


みーちゃんは頭が真っ白になり、その後の岡先生の話が耳に入らくなってしまいます。


──どうしてやめちゃうんだろ?もしかして体が弱いせいかな…


プールの授業の時、岡先生は顔を上げたまま泳ぎます。みーちゃんが理由を尋ねると、耳に水が入ると大変だからと答えています。それを聞いて、みーちゃんはきっと体が弱いからなんだなと思うようになります。


実は、岡先生は不妊治療に専念するために退職することにしています。けれども、小学4年生には理解することがまだむずかしいので、児童たちにそのことは話していません。健康上の理由とだけ伝えています。


下校の時間になり、クラスのみんなは教室を後にしていきます。けれども、みーちゃんは帰る気持ちになれません。


自分の席に座って、みーちゃんは顔を上げます。教室にはもう誰もいません。黒板の前にもいません。


──岡先生が黒板の前に立つことはもうないんだ.


秋の夕焼けが教室を次第にオレンジ色に染めていきます。


机に涙をポトリとこぼしてしまうみーちゃんなのです。


by meist | 2020-09-28 18:44

昭和の小学4年生の毎日


by meist